時を経たものに強く惹かれる。
自分自身が「時を経たもの」になりつつある
からかもしれないけれどw
(不惑の年なう
表参道駅近くのこのお店は、開業約30年。
歴史を感じる店内。老練たる白髪のシェフ。
流れるBGMは軽やかなクラシック。
お店は1階と2階に分かれていて、
1人客は1階のカウンターへ。
わたくしの大好物、カウンター。
シェフの所作や店内のすみずみまでを
眺めながら料理を待つ時間が至福すぎ。
【サラダ】
小さなサラダ。
トマト、レタス、そして
ちょっと意表をつかれて蕪。
フォークを持つと、
む、重い。
なんとクリストフルだった。
それはそれは磨き込まれた、
これまた老練たるクリストフル。
お皿も野菜もよく冷えている。
ひんやりシャッキリ。
ドレッシングはポン酢のような風味??
と思ったらゆずとのこと。
限られた予算の中での
ミニマムな美学を感じた。
《食いしん坊豆知識:クリストフル》
1830年創立の銀製品の老舗メーカー。同社の製品は銀食器の最高級ブランドとして、世界の最高級ホテルや豪華客船などで使用され、「卓上の芸術品」と呼ばれている。
【レトロのメンチカツ】
揚げるのではなく、
オーブンで焼き上げたメンチカツ。
クリストフルの重厚なナイフを入れると、
衣はサクサクではなくしっとりで、
みっっっちりした肉と一体化している。
もはやハンバーグのよう。密度が高い。
付け合わせはかぼちゃ、ブロッコリー、
にんじんのグラッセ。丁寧な仕事。
ソースは単体もしくは野菜と食すると
果実の甘味と酸味を感じるのに、
メンチカツと共にいただくと
その果実味は突出することなく
肉の旨味と渾然一体になる不思議。
美味しい。
ビロードのような上質感ある深い味。
バゲットでぬぐっても最の高。
食後にホットコーヒー。
ガラスの小さいピッチャーには
ミルクではなくクリーム。
ここにも積み重ねた年月を感じる。
以上で増税後も税込み1,000円という
手頃な値段からか、
わりと若めなお客さんも多かった。
スマホを片時も離さずディスプレーと共に
食事をする彼らに、
このお店の価値がわかるのはまだ先か……
とぼんやり思うおっさんのワシ……
厨房のステンレスは磨きに磨かれて
美しい放射状の筋が。
その様は「仕事の厳しさと思いやりと喜び」を
無言で語る。
すごく美味しかったです。
シェフに心の底から伝えて、お店を後にした。
時を重ねた仕事は、無言で、雄弁。
★4.0
トラットリア・オゼール (イタリアン / 表参道駅、明治神宮前駅、渋谷駅)
昼総合点★★★★☆ 4.0